アメリカ人のように合理的

 この間観た映画にヒュー・グラントが出てて、彼は勿論そのヒューっぷりをいかんなく発揮していましたが、ところで、ティーンエイジ・ファンクラブの曲に「アバウト ユー」というのがあり、彼等はライブで、「じゃあこの曲をヒュー・グラントに捧げるよ…。゛アバウト ヒュー゛(笑)」なんて言ってアバウト ユーを演奏したことがあるそうです。それを聞いた時僕は、ひどい駄洒落もいいとこなのにうっかり笑ってしまいました。
 ですが、ひどいとはいえ、そんな小話を自分も是非生活上取り入れたいものです。なぜなら小話は緊張を緩和する、とされているからです。僕は子供の頃、スクリーン内の外人、とりわけアメリカ人などが絶体絶命の危機にあってもひどい駄洒落やジョーク、軽口を叩くのはなんでか?という事が不思議で仕方ありませんでした。当時、母親に聞いたところ、「アメリカ人は強迫的な緊張の中に生きていて、ほら、例えば人種のるつぼとか言うでしょう? それとかあれとかいろいろ大変なんじゃないの。連中はジョークがないとやってられないのよ、ただでさえ射殺が多いのに、ジョークがないとさらに、いらいらしてる誰かに射殺されたりするんじゃないかしらね!アメリカ人って面白いわあ!」というような事を子供の僕に理解出来るような言葉で教えてくれたので、それをかなり信じていたのですが、よく考えたら母親はアメリカに行ったことがない気がしますし、僕も実際に行ったわけではないので大嘘の可能性も否定できず、軽口の謎は深まるばかりです。
 でまあ、この間観た映画はイギリスが舞台なのでメリケンジョークと言うより少しねじれた皮肉っぽいジョークが多く、僕はイギリス人のそういう感じが好きなのですが、よく考えたらイギリスにも僕は行ったことがありません。つまり僕の想像するアメリカ、イギリスはすべて幻想であるかもしれないのです!
 しかし、イタリア人は本当に女性と見るとナンパっぽい行為をするそうです。イタリア行ったことのある知り合いが言ってたので僕の与太話よりは確かかと思います。その人は自分と同名の人と二人で一緒にイタリアに行ったらしく、そしたらカフェで「ねえ、キュートな君達の名前はなんて言うんだい?」とカフェのウェイターに声を掛けられ、同名なので二人一緒の名前を言ったところ、「マンマミーヤ! 君達は僕をからかっているんだろう?だまされないぞ(笑)!」と返されたそうですが、その瞬間、カフェのボスに仕事をさぼっているのを見つかり、ボスに頭を小突かれ、やれやれ、といった表情を浮かべつつ店の奥へと引きずられていったようです(なお、文章上におけるイタリア人ウェイターの口調には僕のステレオタイプなイタリア人イメージが盛り込まれており、多少の誇張がある可能性を否定しません)。
 ということは、まるでベタな映画みたいなその光景を鑑みるに、映画で得た知識というのは案外あてになるのかもしれませんね! というわけで僕はこれからも培った偏見でもって外人幻想と遊んでいようと思います。郊外の幹線道路沿いにあるジャンクフード屋にいるアメリカ人ウェイトレス(痛んだ金髪。ガムをくちゃくちゃ噛んでいる)が、客商売であるにも関わらず商品をドン!と乱暴にテーブルに置くのはガチ、とか、労働者階級出身のイギリス人ロッカーが失業保険で生活していたのは鉄板、とか。そういう感じで。