女線をビンビン感じる?

 たぶん人は普段忘れている(というか意識の外にある)ことが多いかもしれないんですけど、B'zの曲にはたまにめちゃめちゃすごい、すごいっていうのは絶句しつつおもしろいんじゃないのこれという意味ですが、そういうものがあることを思い出してみたいと思います。例えばこれ↓

「HOT FASHION 〜流行過多〜」
(前略)
破裂しそうさ ありもしない 女線をビンビン感じたり
知性の問われる現代ゆえに 文芸雑誌ちょっと
ななめ読みのキーワード ちりばめながらの
主題のウワベを語る デートはもう最低
DOWN DOWN! Set me free! 僕よあるがまま
将来ムリがたたって 消えて亡くなりそう
Bye-bye 薄っぺらなセリフを捨てて
Something drives me crazy でもどうにもとまらない
DOWN DOWN! Set me free! 言葉次第じゃ
ランボオ 詩人になって 星をながめたい
Bye-bye 知らないこと 知らないといえない
Oh my… tell me baby 誰か僕を楽にして
All night long HOT FASHION!!

なんかはかなりやばいことになっているのではないかなと思うのです。楽曲的には「BAD COMMUNICATION」的な、初期B'zによくあった類のメロディ、アレンジで、人によっては聞き流してしまう可能性大なんですが、歌詞を追いながら聴くとこの曲の恐ろしさが露わになると思うのです。

 そう、「ありもしない女線(めせん)をビンビン感じたり」「知性の問われる現代ゆえに文芸雑誌ちょっと」「ななめ読みのキーワードちりばめながらの主題のウワベを語るデートはもう最低」「ランボオ 詩人になって星をながめたい」といった、これが俺・稲葉のすごい方法だと言わんばかりの、「僕の周りの【社会】」を「流行が上滑りする、流行の上っ面でやりくりしている社会」のように定義し、それに対し直接的な言葉でモノ申しているような歌詞群…。ってこれ、ちなみに1990年リリースなんですが、これって今でも歌詞の内容がなんとなく当てはまる人がいたら楽しいなあ、なんて微笑ましくなった後に、「いや…自分もそう、っていうか完全にそうじゃないだろうけど、もしかしたらちょっとそういうところあるのかも…」などという考えが沸き起こってきて怖くなる、かっこつける目的で知識をつけてしまった経験のある人に効く納涼自嘲ソングとしても機能しそうな曲ではないでしょうか…。

 では歌詞の内容を追ってみましょう! まず「女線(めせん)」。「僕はありもしない目線を感じる」ということなのですが、さらに言えば、恐らくその目線の送り主は特に女性なのである、という内容だと思われます。つまり女性の目線=「女線」という風に読めます。女性の視線(物理的実際的なそれと、想像上の女性の視線)、ありもしないそれを感じてしまう自意識ゆえに破裂しそう、という内容なのでしょう。でも実は、女線、女の線、女性の身体のライン、と読めば、服に隠されてるのでわからない「ありもしない女線」をビンビン感じている僕はえろい人、って内容なのかもしれません。って今考えたんですが、そんなこと考えてごめんなさい!

 続いて、「知性の問われる現代ゆえに 文芸雑誌ちょっと」「ななめ読みのキーワード ちりばめながらの」「主題のウワベを語る デートはもう最低」ですが、これはどこで文が切れているかちょっと(昔、個人的に)考えどころでした。というのも実は、メロディ上では「知性の問われる現代ゆえに 文芸雑誌ちょっと」でフレーズが一区切りついているのですが、文章上では「知性の問われる現代ゆえに、文芸雑誌ちょっとななめ読みのキーワード散りばめながらの、主題のウワベを語るデートはもう最低」と一気に読むと割りとすんなり読める気がするからです。僕は中学生の時、「文芸雑誌ちょっと」で歌メロがいったん切れているのと、稲葉の「ちょっと」という歌い方が尻上がりで吐き捨てるような感じであるため、この部分は「知性の問われる現代ゆえに文芸雑誌を読んでいるような奴は、ちょっと勘弁してくれよって感じ」という意味で、そういう人たちが主題のウワベを語るデートをしててもう最低だと稲葉は思っている、という意味なんだと認識していました…。しかしこれはたぶん、いやきっと誤読なのであり、もう一つ白状すると、「稲葉はそう思っている」ではなくて、自分が昔そう思っていたということだったように思います!ヒャアごめんなさい。今はそう思っていません!というか自分が主題のウワベを語っているという…。

 で、純粋におもしろいなあ、って思うのが「DOWN DOWN! Set me free! 言葉次第じゃ ランボオ 詩人になって 星をながめたい」の部分。「ランボオ」部分のメロディは「DOWN DOWN!」部分のメロディを反復しているのですが、「言葉次第じゃ詩人になって星を眺めたい」という文章がまずあって、それをメロディにあわせるために「詩人っつったらランボオだべナ!?」といった按配で無理やり当てはめた感があって最高にCOOLです。カラオケで歌った時思わず笑いました。絶句しつつ楽しくて笑う、という、複数のベクトルに向く感情に襲われます。
 今回取り上げた以外の部分の歌詞はまあ言ってしまえば特に感銘を受けないのですが、1曲でこれだけ楽しい!ってポイントがあるこの曲はすごいなあと、これまた複数の方向へ向かって思う次第なのでした。結論として、B'zは曲によってさまざまな角度から楽しめるのではないかと思うのです。いわゆる「痛い」バンドだから切り捨てる、っていうのも別段いいけれど、面白かったり良い曲もかなりあるので色々含めて楽しむ方がやっぱりお得だなあと思います。

 という感じで、これからいろいろな流行歌について力の抜けた感じで書いてゆこうと思う僕なのですが、そんな僕の好きな食べ物は乳製品であり、やってみたいことは東欧をみて回ることです。よろしくお願い致します。