君の眼に映る僕を、僕は知れない。

(前回の日記の続き)
ウボァー
 綾川「んー、結論から言うと昇龍裂破的な勢いでもって確実に俺の仕事は増えそうな予感、というわけなのさ。同僚が辞めるというんだが、なにしろアイツはまたぞろドラッグの問題を抱えていてね…。ツアーの最後の方なんてもう散々だったぜ。アイツときたら、自分が誰かもわかっちゃいなかったんだから…悲しい話だよね。でも、俺たちは決断せざるを得なかったんだ。ある日、ステージ裏でフラフラのアイツをとっ捕まえて、ヘイ、もう我慢できないぞ!お前は今日でクビだ!って言ってやったのさ。アイツは、へ?ってな具合に肥溜めに突っ込んだようなニワトリ面を下げるだけで、あんまり理解してなかったみたいだけど。まあいいよ、それより新ギタリストのスティーブはドラッグもやらないし良い奴さ!ジミ・ヘンドリクスみたいなプレイも出来るし、エキサイティングでクールなんだ。正に俺たちの求めていたギタリストなんだよね!そしてスティーブと一緒に、俺たちは最高のアルバムを作り上げた。俺たちを信じて待ってくれていた日本のキッズの皆には、是非聴いて欲しいね。前作との方向性は確かに違うかもしれないが、俺たちは常に進化しているのさ。ブルーズだよ、ブルーズ。大切なのはソウルなんだ。そこを感じ取って欲しいな」(同僚の辞職について大いに語る綾川さんのコメント)

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 ってなわけで、まあ、上に書いた文章はメタルミュージシャンのインタビュー文体を意識し模倣しているだけでその内容は97%程度が嘘であり、ついでにいうと彼等の新アルバムの売上は芳しいものとならず、その後数ヶ月でスティーブは音楽性の相違によりあっさり脱退する設定だったのですが、まあ同僚が辞めるので引継ぎにより僕の仕事が増えるという部分だけが本当のことです。とかく本当のことというのは難しいもので、知りたいだけなのに夏休みがもう終わってしまったり、アニメじゃなかったりする厄介なもので、そんなものはないのかもしれないし、あるのかもしれない。僕にはそこのところが、どうにもわからなかった。


 などと逃避をしている場合ではなくて、わからなかろうがなんだろうが、がむしゃらに作業は来るのだし、またこれを機に、業務の効率化をせねばなるまいね、などという気運も社内に高まっているように思う。うわあ。たすけて。たすけて。つまりThis is 資本主義。資本主義は、僅かでも更なる利潤が生じ得る隙間を見つけたのなら、壁面に生じた罅割れに浸入し沁み込む水のように、確実に入り込んでくるのだ。しかし、誤解してはいけない。だからといって我々は疎外など「されてはいない」。その実は笑いながら、笑わされながら?いや、やはり笑いながら頷きながら、最後は有用性という力学に則して我々は進軍するのだから。今日我々は電話をかけよう。水増しした見積を立てよう。そしてそこで売上を増やさなくてはならない。なぜなら稼がなければ、稼がなければならないから。そのメールを私に、クライアントの長いメールを。さようなら我が最愛の休暇よ、さようなら我が最愛の休暇よ。さようなら、ごきげんよう。我ら進軍する、我ら進軍する、我ら利潤へ進軍する、利潤へ!


 …ってことなんですが、まあでも、ホントはつかれるのでしおしおのぱあですよ。そういうのは。けどがんばりまーす(力なくピースサイン)。