やぐちさん、矢口さん

 ふてくされてばかりの10代(友人の車に――大抵深夜の環八か環七か鎌街か綱街か横横か第三京浜かを走っていたのだが――乗り、前を走る車の後部に子供が乗っている旨のステッカー、つまり「BABY IN CAR」のステッカーが貼られているのを指し、「あれは『BABY IN CAR』じゃなくて『CHILD IN TIME』ってステッカーにすべきだよね」などと言い放ちCHILD IN TIMEのリフを口ずさむ、という、メタル好きの『BURRN!』読者でもないと面白くもなんともない軽口を叩き合うような10代)を過ぎ分別もついて歳を取り、夢から夢といつも醒めぬまま僕らは未来の世界へ駆けてきましたけれど、このところ、どうしましょう、高熱と睡眠不全に苛まれています。
 なんていうのは少しばかりの嘘で、実は高熱はけろりんこと治ったのですが、時期的には矢口さんがモーニング娘。を辞したあたりから僕を悩ませる「それら」は始まったのでした。つまり、矢口さんの出来事と、僕の身体が、ココロが、「僕」が呼応したに違いありません。


 と書いておけば、矢口さんの件と僕の身体的もしくは精神的不調とが、少なくともエヴァンゲリオンの起動指数を上回る程度のシンクロ率を誇っているかのような印象を与えることができ、「矢口さんのウルトラ☆ソウルと僕の中にある神霊力が共鳴し、かような霊的共感性を帯びた現象を引き起こしたのだ」、なんてことも主張しやすくなるわけです。それにより、僕はこの日記界における超新星群・スッペシャル霊的ジェネレーションXとして生まれ変わることも叶わぬ夢ではありませんから、かかる地位を橋頭堡とし、あなたがたが日々書き、読んでいるこの日記界のメタレベルに「存在」する魂の日記界を掌握することすら具体性の高い欲望として見えてこようというものなのです。そうだよ。君たちの書く日記は、すべて君たちの魂にも刻まれているんだ。そしていずれそれは、僕が統べる。さあ君たちの魂を僕に。僕の魂を君たちに。そして永遠の日記があるというあの城へ…


 やあごめんなさい。要するに、久々の更新だけれど僕も矢口さんのことがやっぱり気になっていましたよ、ということを言いたかったのですが、僕の悪い癖で日記がオカルト自動書記化してしまいました。
 そんな、ソウル日記ソサエティが存在して千本桜が咲いちゃったみたいな、いかにも春を感じさせるようなうわ言はともかく……矢口さんのことは残念で、僕は「辞めなくてもいいのに」と思っていて、そしてソロというよりは――できればモーニング娘。に――戻ってきて欲しい、と僕の名において「願って」いることを表明いたします。それ以外は、ここには書かないことにいたしましょう。それ以外のことを書き出すと、どうにも矢口さんの件とは関係の薄い愚痴のようなものになってゆきそうですから。