London Girls

近況:僕は偏見を抱えがちな狭量な人間で、「池袋で東京が終わる。池袋以北は東京ではない。つまり北関東ヤンキー文化圏の始点および終点が池袋であり、かの地・池袋が抱える負のオーラはただごとではない、アーメン」みたいなことを普通に素面で言い出すことがあるので注意が必要なんですが(主に自分が殴られないように)、週末所用があり池袋に赴いた際、その思いを強くしてしまいました。パルコに立ち寄ったのですが、フロアマップを見てその近くに行ってるはずなのにエレベーターの場所が発見できない、というオカルト事変に遭遇したり、時間潰しに入った喫茶店が、2階に行くには飲食物を乗せたせいでカタカタ震えがちなトレイを持ちながら客の波をすり抜けざるを得ない、事故発生率の上昇にとって優しく2階に行く客にとっては優しくないつくりになっていたりで、ありえない…と呟くことしきり。特に、「デパートでエレベーターを発見できなかった」というのは人生始めての体験だったので非常に面くらい狼狽し、ついでに、関係ないけど待ち合わせの時間にも少し遅れてしまったので、これはもう池袋にはどっかに悪の枢軸的なちょう悪いやつとかがいて、負のオーラにより池袋ダンジョンの形状を変化させたせいなのではないか、というRPGな気分になりました!っていうかまじほんと池袋はおかしい。

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●5月8日の日記
・ホテル
 この日は夕方くらいにサッカー、アーセナルvsリバプールハイバリースタジアムで観る予定で、旅行会社からチケットがホテルに届く手はずになっていたのだけれど、僕(ら?)の勘違いから確認が遅れてたため、もしかしたらチケットが届いていないのでは…と朝食の席で僕らは焦っていた。
 ホテルの従業員のおねえさんに、「何か俺ら宛てにメッセージが、あの、それって旅行会社からなんだけど、届いてないですか?」と聞くが、「知らない…もう一人の受付なら知ってるかもしれないけど、彼、寝てるのよね」みたいなことを言われ焦りは増してゆく。そこで、「彼が起きたら知らせてください」と妻がおねえさんに頼み、最悪の場合どうしようか…と思案する。
 これで届いていなかったら…との思いが渦巻く中、部屋に戻ろうとしたら、受付のおねえさんが「これじゃない?」って封筒を渡してくれた。その時の僕は、おねえさんに、心の底からサンキュー!って言ったと思う。あぶねー。多分、僕らの深刻な面持ちを察し、もう一人の受付のお兄さんに聞きにいってくれたのかもしれない。それは、まさに僕宛の封筒だったし、後で確認したところチケットがちゃんと入っていた。ちょっと綱渡りみたいだった。というか、チケット現地渡しって少し危険だよなあ、と思う。

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パディントン 〜 カムデン
 地下鉄、キングズクロス乗り換えで、カムデンタウンへ。カムデンといえばその昔、ブリットポップ全盛の折、ロッキンオンなんかに良く出てきた地名で(「カムデンあたりで流行っている」みたいな記述を良く見た憶えがある)、僕も若かりし当時は「なんかカムデンってゆうのはオシャレなとこなんやろか…」と思っていたのだが、実際はどんなところかというとなんのことはないというか、要するに原宿みたいなところである。たとえるなら、竹下通りから、ポップさやギラギラ感みたいなものを若干差し引いて控えめにした感じ。古着とか、昔のスーパーラヴァーズとかで売ってそうな服とか、雑貨とか、ださい(けどそれがいい)ロックTシャツとか、ふしぎな魔法のキノコさんなんかが売っている。

 マーケットで古着でも探そうかとふらふらして、店に入ったり出たりを繰り返し散策。まあ、古着屋というのも――いや僕は古着屋事情に詳しくなんてないんだけれど――僕にとってはどこでも一緒だな、という感じで、値段は微妙に安いんだけれど「これは!」という服は少ない点で日本もイギリスも共通していた。というか品揃えがあんまり変わらない感じだった。
 うーんどうしようかな、と思案していたところ、古書店を見つけたので、服はまあいいかあ、って気分になり、吸い込まれる。そこで、主に英語の勉強のために、ニーチェさんの本とかを買った。家にある日本語版の本と読み比べれば、少しは勉強になるかなあ、と思ったのだけれど、自分の貧弱な英語力を鑑みるに読み終わるまでどれくらいの時間がかかるのかはわからない。

 その後、おなかがすいたので、ゴートカレーwithライスを食べた。ライスはタイ米?を使用しており、異様に細長い米粒が僕に向かってハロー!なんつって手を振る見た目をしていたのだが、すでに米に飢えていたこともあっておいしくいただく。かつてはメェ〜などと健気に鳴いていたかもしれないがもはや料理に変化してしまい僕に食べられる運命となったゴートさんは、やはり独特のゴート臭を顕著に放っていたのだけれど、それも含め文字通り「味がある」感じで、微妙にまずくて微妙においしかった。というか、ロンドンで食べた料理は全体的に、微妙にまずくて微妙においしかったような気がする。


 次の場所へ移動しようかと思った時、メインストリート沿いの服屋で「これはもしかいいかも?」というライダース風のジャケットを見つけたので、購入した。服を眺めつつ、妻に向かって「これどうかな?」「いいんじゃない」とかやりとりしていたら、店のお兄ちゃんがやってきて、「彼女がオーケーっていうならその服はオーケーさ!そうだろ?」みたいなことを陽気に言い放ってきたから思わず買ってしまった、というのもある。

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・カムデン 〜 エンジェル
angel
 アンティークな雑貨や家具が見たい、という妻のリクエストにより、その名も「エンジェル」という駅に赴く。ロンドンの地下鉄の駅は、直接的というか、略しすぎだろ、って名前も多くて、なかなかすごいなと思う。「テンプル」とか「モニュメント」とか「バンク」とか…。「エンジェル」にしたって、天使あるいは使徒あるいは遊人せんせいの漫画から取ったような名前だし、おやおや一体どんなエンジェルがいるんだろう?と考え期待せずにはいられない。

 が、まあ、結論から言うと普通の街でした! ただし、普通の街だけにその普通感というか、歩いてると散歩にきました感があってとても良い雰囲気。アンティークものをたくさん扱っているというアーケードは改装のためだかで閉鎖されていて、とても残念な思いをしたのだけれど、近くにあったパブに入ってギネスを飲んだりしてなかなか良い時を過ごす。パブのお兄ちゃんが、日本から来たのか、というので、イエス、って答えると、日本はトーキョーから来たのか?(イエス、トーキョーだよ)、そうかそうかトーキョーはみんなエクスペンシブだよな、とさらに会話は続く。そこで、ヤー、とかなんとか、僕は賛同の意を示したけれど、よく考えたらロンドンの物価だってたいがいだよ、と思った。パブの片隅にはゲーム機が置いてあり、あなたのトリビア度をチェック、みたいなクイズゲームが中には入っていたので、イギリスでも「トリビア」ってあるのかな、とか考える。

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・エンジェル 〜 アーセナル
 サッカーの試合が行われる、アーセナルのホームグラウンド、ハイバリーがあるアーセナル駅へ移動。スタジアム周辺は主にアーセナルサポーターで盛り上がっており、警備のためにいたのであろう、騎馬警官もそこらじゅうを闊歩している。そして、必然的に馬糞もその辺を闊歩していた。ちなみに、周りにいるサポーター連は、例えばアフタヌーンティーのところにいた店員さんなんかと比べるとけっこう発音からして違い、ワイルドな雰囲気で、コミュニティーあるいは階級などによりやはり違うものなのかな、と思った。

 試合の方は、既にプレミアリーグチェルシーが優勝を決めており、いささか消化試合的なのかも、とも思っていたが、アーセナルはこの日勝てば2位確定で、リバプールも4位とかで、そうなるとチャンピオンズリーグも絡んでくるんだし、そんなにやる気の無い試合ではなかった。というか、むしろおもしろかったと言える。

Arsenal

■というわけで試合雑感
試合結果:アーセナル 3 / リバプール 1
(前半)
 前半、立ち上がりはどちらのペースともつかない展開、というより若干リバプールペースでもあったのだが、徐々にアーセナルが試合を支配してゆく。攻撃の起点は、おおよそビエイラ、ピレスの2名。彼らの能力の高さにより局面局面でボールを支配し、あるいはディフェンス数名に囲まれるような閉塞状況を打開し、その結果開いたスペースにパスを送る、という形が頻繁に見られる。それはリバプールの方もやろうとしていたことだったのだろうが、彼らのほうは今ひとつ、前線とパサーが噛み合っていない印象だった。アーセナルは、特にサイドに開いたスペースにボールを供給し、走りこんできたサイドハーフサイドバックを使った攻撃を多用しており、それがリバプールディフェンス陣を崩していた。

 1点目は、ゴール前からフリーキックを放ったアーセナル・ピレスのゴール。カーブがかかった、綺麗な放物線がリバプールゴール右上方隅あたりに突き刺さる美的なゴール。このゴールで勢い付いたか、全般的にアーセナルペースで試合は進む。その後、とある局面で、カウンター気味の攻撃から、恐らくピレスだったと思うが、彼の出したラストパスをアーセナルのスペイン人アタッカー、ホセ・アントニオ・レジェスリバプールゴールに沈めて2点目を生み出した。前半はおおむねそんな感じで終了。

(後半)
 後半に入りリバプールの動きが良くなった。いや、アーセナルの動きが悪くなったのか?微妙なところだったけれど、リバプールのジェラルドが1点を返す。その後のリバプールの攻勢はアーセナルを束の間圧倒したのだが、10分もすると彼らは徐々にその勢いを失っていった。しかし、後半はアーセナルの方もそこまで支配的にゲームを進めているわけでもなくて、途中出場したベルカンプがあまりうまく機能していなかったりリバプールに押されたりなどの不安材料はあったと思う。だが、後半ロスタイム、確か……ビエイラが起点となりリバプールにトドメを刺す一撃が生まれたのだった。絶妙の身体バランスでディフェンダーから干渉を受けない体勢になったビエイラ?が、右サイドにパスを出すと、サイドに誰だったかな、ベルカンプかな?がいる。クロスを上げさせないよう対応するディフェンスを欺き、彼はキックフェイント気味なアクションを駆使してペナルティエリア内に入り込み、グラウンダーのクロス、ラストパスを出すと、そこには後方から走ってきたセスク、だっけかな、がいて、ボールはゴールに吸い込まれたのだった。

 まさに終了間際だったので、さすがに2点ビハインドをひっくり返す力はリバプールには無く、というかリバプールじゃなくても無かったと思うが、そこで試合は終了した。

■その他雑感
 イギリス人のサポーターはやっぱりfuckfuck言いまくるんだな、ってことを確かめることができて個人的には、おお!という感じ(妻は怖がっていたけれど…)。あれは、日本で言うと、競馬場とか競艇場が一番雰囲気近いのかもしれない。例えば僕らの隣には、わりとおとなしめな感じのお兄ちゃんが座っていたのだけれど、彼は前半こそ選手のプレイに対し「Good...」だの「Well Done...」だの、比較的お行儀のよろしいコメントを言っていたのだが、後半になってからはエキサイトしたのか豹変。相手(リバプール)選手がファール気味のプレイをしたり、審判がアーセナルにとって怪しげな判定をしようものなら、「Fuckin' Idiot! Fuckin' Lineman!Oh, Fuck Off!」などと激昂してわめき出すようになったりしたのでビックリした。

 その他にも、アーセナルサポーターはリバプールの選手が何かやらかしたら、「○○(相手選手の名前)〜♪is a Fuckin' Asshole〜♪」なんて歌を非常に野太く、大きな声で合唱したりしてたのがおもしろかった。というか、ひどい…でもおもしろい…。

 また、試合が終わったら案外あっさりしたもので、あれだけ試合中騒ぎ立ててた連中がぞろぞろと気が抜けたように帰ってゆくのが印象的だった。なんというか、興奮もクールダウンも、きっと日常なのだなあ。

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・サッカーを観終って
 本屋とか行こうとしていたのだけれど、二人とも非常に疲れがたまっていたので、ホテルに帰る。ごはんはスーパーで買ったカップラーメンとかサラダとかを食べた。僕の日記をつぶさに読んでくださっている奇特な方なら薄々感づかれたかもしれませんが、僕らの摂る食事が日を追うごとに奇跡的加速度で手抜きかつ貧相になってゆくのは、僕らの性格によるところがきっと大きいです!ご飯食べるのって意外とつかれますしね。

 BBCでやってた、過去何十年かのヒット曲を放映する音楽番組を見ていたらすごく眠くなったので、就寝。

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