イケナイコトカイ

1:耳うちせずにいられないことが

 夢の中で夢を消された憐れなワーカービーであるとか、ボルト&ナットの仕組で組み込まれる街で爆弾にはなれないオーノー、であるとか、そういった感じの、世事に苛まれる日々を憂いヒムロックな按配で呟くうちに日記やブログの更新が滞り。しかし、さて、久しく書いてなかったが何かしら書いてみようと思い立ち、テキストエディタを立ち上げ、文字を打ち始めるとき、愚人はえてしてそのさもしい心性を顕わにするのである。すなわち、久しぶりに文章を記すがゆえに「これ」は「本来の」自分の文章などではない、もしあなたの目に、「これ」がまったく魅力の無い――文字を追う喜びも、笑いも、哀しみも、愉悦も、覗き見欲を満たすことも、激昂も、トンガリも、キッズも、有用性も、エロスも、射精も、裏切りも、幸福感も、悲壮感も、濡れ場も、涙も、恋も、愛も、桃色も、片思いも、ドッキドキも、ラブメールも、アパシーも、シンパシーも、ファンタジーも、アナロジーも、トロツキーも、スカトロジーも、ガストロンジャーも、ロマンティックも、浮かれモードも、性の目覚めも、老衰も、期待も何もない――ものとしてうつるのだとしても、それは私の所為ではなく、外在的な要因、ひとえに更新が滞った間のその「時間」の総量によって「私の本来の」文章の魅力・能力が攻撃され、重圧を受け、損なわれているからである、と愚人は自らを偽り考えつつ、前にも増して何も書き得ない自己を正当化し、文章を読むであろう人々に向かってこう記すことだろう。

「日記の書き方を忘れてしまいました」


2:街道沿いのロイホで 夜明けまで話し込み

 というわけで、何が言いたいのかというと言わなくてもわかってしまうような気もしますが、要するに日記の書き方を忘れました。てんで。性悪に。というところで、話を変えます。地軸捩れねえかな、ええと、言っていいのかわからないけど『NA NA』とか『ハ チ ク ロ』のステキさがわかりません。

 件のステキ漫画どもが、ステキ人種に読まれまくり、バグってハニーな趣でググれば大量に関係サイトがヒットするし、本屋では平積みだ、つまり高橋名人逮捕説のような勢いで世にステキインパクトを与えてたいそう売れているのだとゆう。だとゆうも何も、『NA NA』の脅威ときたら僕、数年前に日本の暗部と呼ばれる某所で、「NA NA原画展」みたいなのにウッカリ紛れ込んでしまい、そこは当然NA NA儲、NA NA厨の巣窟であったから、非常に空間的からしてNANANANAしており、場違い感から精神的にフクロダタキにされた心的外傷を持つ私のことですからよく存じていたのですが、あと、フクロダタキにされるというのは多少は面白いかなと思って書いているのがいろんな意味で面白い箇所で、そういうことを書くとメタ化のスパイラルが発生してはてなダイアリーっぽくない?という按配ではあるけれど、『ハ チ ク ロ』については売れてるのは知っていたけど正直それ以上の情報をあまり知らなかったと言えます。なんだか聞くところによると、『ハ チ ク ロ』はあくまでステキな萌えキャラが勢ぞろいの、読むと美大生のおムネをキュムキュムしたくなったりするストーリー、じゃないや、その書き方は単に僕の無意識下の願望を記したものであるに違いなく、ただ、もし僕が真顔で書き間違えたのならフロとかイトとかそっち方面の先生に出張ってもらう必要もあるかもしれないが、俺は意図して間違えている(説明終わり)。ということで、とにかく『ハ チ ク ロ』は、読むと読者のおムネがキュムキュムしたりする美大生同士のラブストーリー、ということらしく、なるほど、聞くからにとてもステキそうで、申し訳ないのだけど、今はまったく読む気がしません。他人の色恋など、特にそんな奴らの色恋、読み知る気力はもはやない。


3:世界の片隅で抱いてと叫ぶ

 と、何の因果か仕事の因果か、かなり心の狭い記述をしたためている僕こと日記(HN)ですが、毒舌系はもう流行らないこのインターネット、そして毒舌系であった試しはない俺の日記、だからやはり正直に有り体に書きますと、最近、そういうステキ漫画もいいものだと思っている。

 ただ、友人と話していての結論として、『NA NA』、あるいはもしか『ハ チ ク ロ』の魅力は『島耕作』のそれと同種であると思っていたし、今でもそう思う。すなわち、『NA NA』に出てくる(らしい)オシャレなバンドだかなんだかのメンバーの日常・事件・色情のもつれの浮世離れ加減だとか、あるいは、同じ作者が描いているらしい、ジョージ(当然、情事のメタファーであることは疑いようもない)・キャロライン(当然、フェラチオのメタファーであることは疑いようもない)などと呼び合う、脳の回路の繋がり具合が個性的と言えなくもない男女が出てくるらしい『PARADISE KISS』の世界、そして『ハ チ ク ロ』に出てくる(らしい)萌え萌え美大生(それ以上の情報を知らないが、まあ間違っていないと思う)の日常・事件・色情のもつれなどは、恐らく通常では体験し得ない世界への憧憬が込められた過剰なファンタジーと断言しても差し支えないのであろうし、その意味でそれは、『島耕作』に出てくる「ドアを開けたら裸にコートを羽織っただけの、全角度・全歴史的に積み上げられた道徳観から考えてビッチとしか思えない女が“今すぐ抱いて”と性交を迫ってくる」なんて気狂い夢想を反映したシチュエーション*1が指し示す『島耕作』だいすっきなサラリーマンの願望、と質的にそう遠くないことは容易に首肯できるのである。

 しかし、何故か僕のおうちに置いてあった(というか妻が購入した)『PARADISE KISS』が、読んでみると意外と楽しめたことは、ちゃんと書いておきたい。この分だと、『NA NA』も(きっと『ハ チ ク ロ』も)、たぶんおもしろいのだろう。というか、元々『NA NA』や『ハ チ ク ロ』を、そもそも僕は絶賛しててもおかしくないのだ。ちなみに『NA NA』は1冊読んで、たぶん、場合によっては好きになれそうだったのだが、ただちょっと、最近の心の具合とか、仕事の忙しさとか、タイミングが悪かっただけなのだ。だけなのサ。You Know? What I Mean?


4:逢いたいならば夜空またいで

 という感じで、前述のように山の天気と同じくらい変わりやすい僕のココロなのだから、今後、誰かステキな女の子とかが『NA NA』や『ハ チ ク ロ』を褒めていたら、マジ、すげえいいよね、とかいって徹底的に全肯定する準備は出来ています。っていうか、今日の日記は大げさに書きすぎで、何もそこまで『NA NA』や『ハ チ ク ロ』をなんだかなあと思ってたわけじゃないんですが……。そんなエクスキューズ。けど妻が『NA NA』や『ハ チ ク ロ』を褒めたら、っていうか褒めてた気もするけど、その場合、心底同調できる部分はするけど、そうでないところはしっかり自分の意見を言うと思う。日記には書かないことを言う。僕の日記は嘘とか適当が多いけど、そこでは本当のことを言うだろう。世界はどう呼ぶか知らないが、僕はそれを愛と呼ぶ。独善的に。

 

*1:確かそういうのがあったと思うけど、もしなかったら僕の脳味噌がどうかしてるという証拠なのでごめんなさい……