石川梨華さんとすれ違い?

 まあ、その、なんだ、結論から言うと、どうやら僕は今日、世間的にはハロプロメンバー美勇伝元モーニング娘。として知られているところの、ある種の人間的実存(含む僕)どもにとってはどのような肯定的言葉もってしても言い尽くせるかわからないであろう存在であるところの、石川梨華さんと道ですれ違った「らしい」。

 打ち合わせに行く道すがら、僕が勤務する会社の近くを歩いていると、同じ道を反対方向から、帽子を目深にかぶった2名の女性が歩いてきた。一人は白いダウンジャケット姿で、もう一人はより小柄で、黒いジャケットを着ていた。服装の細かいところまでは一瞬なのでわからない。とにかく帽子は目深にかぶっていた。僕は営業の人と一緒に歩いていて、彼女たちと至近ですれ違ったのだが、その後営業の人がちらちらと通り過ぎた女性たちのほうを振り返っていたので、どういうことかと聞いてみたのです。

僕「?…どうしたんですか?」
営業「いや、今のあれ、モーニング娘。じゃないの?
僕「(!?)…って、え、まじすか??誰?」
営業「んー、と…石川?やっぱかわいいんだな。一緒にいたのはマネージャーか何かかなー」
僕「まじっすか、すげー(社会性を重視し、咄嗟に抑揚を抑えた生返事)、って、(社会常識の範囲内で声量を抑えつつ)え、ちょっと俺、戻って見て来ていいっすか!?」
営業「ダメ!打ち合わせ遅れるから!」
僕「(殺意をおぼえつつ)いやー、そっすねー、ちくしょー(抑揚なく)」

石川さんとすれ違い?

 ……えー、それではここで皆さんに、哀しいお知らせがあります。乗客に日本人はいませんでした。いませんでした。ではなくて、要は俺、「石川さん」の顔をあんまり見ていない。帽子をかぶってて顔が見えないけどかわいい感じの女の子が歩いている、程度の認識ですれ違ってしまった。意識の外を突かれ、マーク外す飛込みでサッと抜かれた。サッカーで言うところの消える動きですり抜けられた。『フリージア』でいうところの「擬態」を使われた、というか、『HUNTER×HUNTER』でいうところの「絶」を使われたようなもの。そしてこちらは「円」を怠った。営業の人は、僕とちょっと離れて歩いてて、僕らとすれ違い際に、「石川さん」が顔をついと上げた時に、確認したのだという……。それ以上、多くは言うまい。それ以上は沈黙しなくてはならない。

 もちろん、すべては誤認に過ぎないのかもしれない。だが、営業の人はいわゆる「一般人」であるが芸能情報に詳しいので、誰かと見間違える可能性は実は低く―――ホントに疎い人は、メンバーの顔や名前など知らないこともあるし、まずすれ違いレベルで名前は出てこないだろうから―――けっこうな確率で「そう」なのかもしれない。はたして、僕がすれ違ったのは「そう」なのか…あと隣の女性は「誰」なのか…かなり小柄だったのが気になるが…というか、近頃忙しくて、周りの景色に目を向ける余裕もない…そんなのって、よくないですよね……なんてな感じの癒し系雑誌記事の導入部分のような日々を過ごしているから、意識レベルが下がり気付かなかったのだとも言えるので、これは立派な労働災害とは言えまいか?ということで、労災請求をしたいです! あと、営業の人だけがはっきりと見て僕が見れてない、というのは明らかにおかしいし、そもそも営業の人(他人)が見た光景を僕が見ることは出来ない、とかいう人間のクソ仕様にも飽き飽きですよ!いますぐFTPで映像送ってほしい。いや、送れ or DIE…!!


 そんなわけで、人間仕様の明らかな設計ミスを嘆きつつ、最後に、営業の人のお言葉を紹介します。

「みんな“芸能人みたことない”とか言ってっけどさー、気付いてないだけ! そこら辺歩いてるっつうの!」

とのこと。世の中には、確かに芸能人センサーを兼ね備えていて、やたら街中で芸能人を見つけるのがうまい人がいたり、あと日記センサーを持ち合わせていて、やたらインターネットの人を見つけるのがうまい人がいるのは、こういうことだったのか。みなさんも、このお言葉を胸に、必死で芸能人を探したり、追っかけたりして、捕まったり捕まらなかったりしたらいかがでしょうか?まあ、国家権力に拿捕されても僕はいっさい責任は負いませんが…。