平気 涙が乾いた後には 夢への扉があるの

●某月某日たちの記録

 休日だというのに襲い掛かる労働への意欲を燃やすため、CATVで「パリス・ヒルトンとあと誰ちゃらいう名前のもうひとりのビッチが一般家庭にホームステイ!一般社会に分け入り広告代理店に潜り込みセレビッチ労働(まあ正味な話何もしない)をしてお金を稼ぎ、社会及び家庭に貢献!というか、どっちかっていうと番組の趣旨はセレビッチーズのLOW-IQぶりを笑って楽しむだけ!(で、実はそれを見て笑ってるあなたのIQの低さも同時に証明できますよ)」といった内容の、非常に人類としてのネクストステージに達した感のあるテレビ番組を見て労働英気を養っていたら、ふしぎなことに労働する意欲が減退したので買い物に出かける羽目になりました。ああ、パリス、君は実にいやらしい娘だ。君のその不埒な笑顔は、世の中、消費に次ぐ消費でしか正気を保てないことを僕に思い出させてくれる、実にノーティな、君は、実に、そのいつも何らか、もの欲しそうな顔は、僕の、彼らも、彼女らも、みんなの心の中にあるもの欲しさを体現しているかのような顔で、たまらない。君が出ている番組を見ていると、僕もセレブになれそう、つまりはある意味での貴族になる意志というか、畜生の群れから脱却する意志が沸いてきて……


 というのはまるきり嘘だけど、でも確かなことは、パリスの、全方位および特定部位のユルさを体現しているかのようなとろんとしたビッチ眼アイを見ていると、働くとかめんどいこと正直もういいよね、って気になってくることであって、実際もんだい休日に働くのとかはちょうめんどいから、そうなると僕はもう買い物に行く。原付を駆り、消費の快楽に身を委ねに飛び出す。長らく食っていなかったラーメン屋に行って中盛りチャーシュー麺味濃い目麺固めをはふはふと食したり、久々に入ってみてよくよく見たらなかなかいい品揃えしてたのね、って古本屋でちょっと面白そうな70年代くらいの本を買ったり、ブルジョワジー御用達で僕のような庶民が普段使いするには微妙にいやらしく価格設定の高いスーパーを華麗にスルーしまくって更に隣駅まで原付を走らせ、沈んだ乳色って感じの陰鬱な照明に鈍く照らされるフロアーが2層仕立てになっていてしかもほとんどレジに向けて1方向にしか進めないようなつくりの、つまり構造上必然的に2階→1階→レジという流れに客を誘導し客に進行方向の選択肢を与えない&不可逆性を高めているというか要するにゆっくり買い物などは出来ない仕組みに落とし込むことでむしろ客自体の稼働率・回転率を上げ、そんな斬新な方法で更なるコストダウンを図っているとしか思えない構造をしたスーパーマーケットに狙いを定め、肉や魚などを安価に購入し、ああ今日はここで買う秋刀魚を塩焼きにして、あとは冷蔵庫に残っている豚肉とセロリでオイスター炒めでも作ろう、などと思いつつ、とはいえもちろん、他のスーパーとの比較も欠かさないちょいワルな処世術も身につけている僕は、場合によっては買い物戦場をいくつも駆け巡ったりもやぶさかではないけれど、その日は面倒なのでそれをせずに結局のところそれで帰ってみるとリビングにバッタがいた。そういえば仕事に出ている妻から「リビングにバッタがいるから気をつけてネ(Heart)」という、私が帰ってくるまでにどうにかデッドオアアライブを問わないけど片付けろオアダイ、という難題を遠まわしに言われていたのだったが、するとリビングでは確かにどこからともなく屋内に入り込んでしまったバッタが飛んで、いた。飛ぶ虫は、僕は、あいつら飛ぶので大嫌いなので、そう簡単にどうにかできるはずも無いのだが、そこはそれ、やはり文明が齎した殺虫ノウハウを駆使して殺生をせざるを得なかったのだけど、そういえばそのとき、陰茎や陰嚢を右に左に揺らす際の開放感ってステキなものがあるよなと思い、男性向けにbranc brancというインテリアブランドを立ち上げてはどうか、と思った。ブランド名には右に左に揺れても僕らは自由だ、という意味が込められているわけだけど、要するに最近休日は僕が家にいることが多いので休日主夫的な動きをしていることを書き留めつつ、実は今回の日記にはおよそ更新をしていなかった2か月の間に起きた様々なことをごっちゃに書いているのである意味割と嘘日記なのである。日記を書いていなかった間、人生から逃げ出したくなったこと数回、顧客や会社体制に殺意を覚えたこと数回、ため息が出るような面倒なことが降りかかってくることほぼ毎日、あとは家庭やら職場でのどうしようもない諍いなども数回、で、その他は概ね穏やかなハピネスがあったりして、つまり僕は普通に生きている。という生存報告。



 あとそうだ、京都に行ったので写真だけ載せておきます。京都良かった。