ファンファーレ・チォカリーアのライブ

ファンファーレ・チォカリーア / すみだトリフォニーホール
 土曜日、ファンファーレ・チォカリーアのライブを観に行きました。当日、仕事様のお陰様でトリフォニーホールに到着するのが遅れ、前座のキーラを聴けなかったのが相当残念で仕事様に中指立てる勢いだったんですけど、ファンファーレ・チォカリーアの出番には間に合ったのでほっと一息。

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 冒頭。『黒猫・白猫』でもお馴染みの「Djindji Rindji Bubamara」(多分そう、っつうかメロディはそれだったような…)に合わせて徐々にメンバーが登場し、メンバーが揃ったところでブラス音疾走といった趣の演奏がはじまったのですが、トリフォニーホールは普段オーケストラのコンサートなんかで使われるということで、かなり上品さを意識した造りだったことがファンファーレ・チォカリーアのライブに関してはプラスには働かなかったかもしれないなあと思いました。というのは、音の方は身体的な動きを高度に誘発するようなものであるのに対して、ホールの造りの方が「座して音を聴く」というのが前提であるように思えたため、客席の観客が身体的な動きを躊躇するような雰囲気があったように思えたからです。別に立ち上がって身体を踊らすことが「音楽の聴き方」ではないだろうけど、座して音を聴くばかりが聴き方でもないだろう、というわけで僕としては流れている音楽と自分の感覚に従い、立ち上がり踊りたかったんですが、雰囲気に負けたのと(あと三階席という遠い遠い席だったのと)、そして聴き方云々もあるけど「迷惑」かなあとも思ってしばらく立ち上がりませんでした。まあそれでも最終的には、ライブも4分の3過ぎくらいから、バンドもそれを煽ったってのもあって3階席でも立ち上がる人が出てきたので僕も立ちましたが。でもこの辺の、音楽によって立つか座るかの判断ってのも難しいように思います。聴き方に正解はない、とは言うものの、クラシックのコンサートで立って踊って聴いていると睨まれそうだし、逆に、ロックのコンサートで座っているとファンに睨まれそうだし、という…。会場は立派だったけど、その辺の判断に気を使ってしまうような雰囲気なのが逆に残念だったかなあと思います。クラブとか野外とかだったらなお良かったと思う。

 話が逸れました。彼等の音楽の方に話を戻します。高速で吹かれるブラス、高速で叩かれる太鼓*1の音が重なり合った「音楽」、その大きな大きなエネルギーに直にさらされてる感覚だとか、曲中、音が静寂へと向かい、まさに静寂へ至る瞬間の(ほんとうに瞬間の)境目で感じる、なんて言ったらいいんでしょうね…ひとつ気取って“静寂が始まる時点と喧騒が収縮する時点との境界の、境界ゆえに感じられる音楽の永遠性”とか言えばいいのでしょうか?なんて、うわー自分で書いてて恥ずかしくなる。そんな言葉はあんまりどうにもならないくらい実際に起こっている“それ”に近づけていない言葉だとは思うんですけど、まさに“そこ”でしか感じ得ないような瞬間がずっと続く錯覚のような感覚だとか、逆にその静寂から立ち上がる際の音の一撃だとかがほんと素晴らしい…彼等の音楽のメロディやリズムには「ジプシー」やらなにやらといったキーワードで表現されるような特徴が確かにあるんだけれど、でも、「だから」聴いてて気持ちいいというわけではないんだなと思いました。いや、その要素自体も確かに気持ちいいものなんですけれど、何か意味とか物語だとかそういうものを考える前に音に連れていかれる、というような、音楽を味わう快楽のひとつを強烈に体験させてくれるっていうのが最も素晴らしいところじゃないか?なんてことを思いました。

 で、最高だったのは、終演後、帰ろうとする客を引き止めるかのようにトリフォニーホールの出入り口前の階段にバンドが現れ、かなりの曲数(1曲や2曲なんてもんじゃない!)を演奏をしたことでした。これにはもうほんとに嬉しくなってしまって、ぴょこんぴょこん踊らざるを得なかったというなんとも素敵なハプニング。というか、すっげええええええええ楽しかったですよ! チォカリーアの間近での演奏はもうぐいぐいと身体から多幸感とダンスを引き出される感じで、いやあ、音楽ってほんとうにいいものですなあ、と思いました。いやほんとまじで楽しいしやばいし素晴らしかったんだって。帰っちゃった人は可哀想としか言い様が無いです。そんで、曲にあわせて、禿頭でぶのオヤジ(メンバーの一人。余談だけどメンバーはみんな酒場でクダ巻いてるような風貌の人ばかり)が「アリガトォ」なんて言いながらしっかりおひねりを集めていて、帽子の中に客が何人も千円札を入れていました(五千円札を入れている人もいた)。僕もにこにこ踊りながら千円札を渡したんですけど、ところで僕は酔っぱらいみたいなヨーロッパ人に千円札を渡したのはたぶん人生初で、つまり僕の初体験はそのオヤジだったということになりますね。まったく人生何が起きるかわかりません。あとまああの金は多分連中の飲み代だのなんだのに消えていったに違いないと僕は睨んでます。場所、錦糸町だし…。あ、そんなこんなも含め、いや、素晴らしいライブでしたよ。なお、渋谷のオンエアイーストだかで彼等の追加公演があるらしく、平日だから僕はまあ間違いなく行けないんですが、体験する場所としてはそっちの方が良さそうなので興味のある方は行ってみるのもよろしいんじゃないでしょうか!って思わずオススメしたいくらい良かった。

※写真は階段上で演奏するチォカリーアと、周囲の群衆。携帯の写真なのでわかりづらいけれど…

*1:高速一辺倒でなしに、ゆったりした曲もあります