恋は「ひとり」とだけなんて誰が決めたの?

 この日記を最初に書こうと思ったのが6月に入ってすぐくらいだっただろうか、そして書き始めたのは実は6月の12日くらいなのだけど、書き終えてみれば最初に書こうと思った内容とは全然違っているし、そもそも書き出してから書き終えるまでに数週間かかっているのは何故ホワイと思う。だいたい最近、いろいろあって労働も激化しているので、そういうことからも陰謀めいたサムシングを感じずにはいられない。そう、世の中は陰謀で満ち溢れている。と『N.H.K.にようこそ!』の佐藤くんも言っていたけど、そして『N.H.K.にようこそ!』の岬ちゃんは萌えるよなあと思うのだけれど、先日、深夜に帰ったらもう妻が先に寝ていて、食卓には冷めた夕飯と“恋は「ひとり」とだけなんて誰が決めたの?”と題された特集が組まれたan anが置かれていたことも、やはりなにがしかの陰謀を感じさせずにはいられないのであった。


 イエス、それは確かに誰も決めてなどいないのだが、しかし……と思いつつページをめくってみると、「恋はたくさんしたいけど、彼のそれは許せません! オトコの浮気をチェックする!」「浮気はキャリアアップの一つの手段」などのワールドイズマイン感溢れる見出しが躍っていて、そして「ひと夜の恋もいい? オンナを磨く、夏の冒険愛のオキテ。」という記事に至っては、「一夜のアバンチュールもアナタから積極的に楽しんでみて!」と、小倉智昭あたりが眉間に皺を寄せながらも大喜びしそうな乱れた性行為を奨励するようなことが書いてあり、そこには果たして、“下手に情が移らぬよう、セックスしたら相手より先に帰ってしまえ”、なる、非常に実践的なアドバイスも載せられていたので、しょうじき目からウロコの一枚や二枚は落ちたとおもう。


 総合すると、どうやら、“恋のスイッチ”をたくさん持っている女性は素晴らしく、その素晴らしさが浮気という形で表現されても、それは人生のキャリアアップのための行動である、ということのようだから、an an特集に共感を覚える女性は石田純一あるいは島耕作リスペクトなのか?と思うのが自然だし、情が残らぬようセックスしたら先に帰ろう、などの記述も、平たく言えば即ヤリ直帰、みたいなことなのだから、それってできない男が憧れる「いろんな女性と面倒ごとなくセックスができるエリートサラリーマン」像のようなもので、もう少し言えば毎日メールボックスに届く「欲求不満のOLに人妻……後腐れ一切ナシの即ハメセフレをゲットしよう!」みたいなスパムメールの内容と基本的に言っていることは同じなのでは?と思いはするものの、そのあたりを、恋する女は時に残酷なものだから……の一言とかでまとめられてしまうと、何も言えなくて、夏、という感じはする。
 そう、恋する女は時に残酷、という言葉だけを取るならば、それ自体には確かにおかしいところはない。しかし、そこには溢れんばかりの自己中心主義を込めることが可能で、そうなると“恋する女は時に残酷”という言葉は“浮気は男の甲斐性”などの物言いと意味的に近似してきて、要は自分さえ上位にいれば言ったもん勝ち・やったもん勝ちの世界になる。そのあたりの権力ゲームをうまく誤魔化したまま、“恋する女は時に残酷”“浮気は男の甲斐性”であるのだから、それは当然というかまあしょうがないことで、自分の欲求に従うべく、恋愛(人間関係)のある時点における下位従事者が“従うべき規律”であるかのように振る舞えちゃうのは、ちょっとズルい女/ズルい男かな、と僕は思ったり思わなかったりというか思ってます!


 なんてことを言いながらも、まあ、別に、その辺も含めて基本的には好きにやればいいんじゃないかな、とはやっぱり思う。上で書いたような、おれルール/わたしルールを元にしたロジックを自己都合で使い分けることができる人間の二面性というか、そういうズルさはやだなー、と個人的にはけっこう思うのだけど、正直僕も別段ことさらに女性/男性のアレコレとかan anを死ぬほどどうこう言いたいわけではなくて、実際のところはそのan anも妻とケタケタ笑いながら読んだのですが、要は男だろうと女だろうと、だいたいみんなラブとか好きだからしょうがないんですよね、実際問題。ただ、そのラブとかが表面化する際にいろいろ問題が多いだけで……。そんな按配で、今日もどこかで誰かがラブのせいで泣いたり笑ったりしているんだろうなあ、この世はまだまだ陰謀に満ち溢れています。先日は、妻が近所を歩いていたら、中年男性に「人妻秘密倶楽部の●●さんですか?」と声をかけられたそうです。確かに、我が家近辺にはその手の秘密結社が数多く存在するらしいのですが……僕の妻は夫の贔屓目補正を考慮しつつも基本美しいはずだが、お前が呼んだ秘密倶楽部員ではないのであって、僕の妻なのであるから滅しろお前。あと妻は愛してる。そんなわけでもう寝ます。あしたはやいの。