はてな夢日記:イラプション

 シールドをアンプに繋げると、光射す第二体育館の中、曲が始まった。バンドのメンバーが僕を取り囲み、なんとなく期待の目を向けている。曲に合わせてギターを弾け、という。僕はギターなんて、昔買ったというだけでまったくといっていいほど弾けないから、かなり気後れしていた。こいつらは何を期待しているのか、僕が弾けないのを知っているのではなかったんだろうか。促されて、ギターを手に持った。ストラップが肩にかかっていなかったので、かけなおす。僕は覚悟を決め、といえば聞こえはいいが、その実自棄になって、やたら滅法弾き始めた。
 なんだか適当に、チョーキングだとか、タッピング、うろ覚えのものを見当はずれに弾いていた。ギターはというと、黒のストラトキャスターを元にしているが、どことなく違う。これはきっと別メーカーの、まあ廉価版なのだろう。ピックアップはフロントがシングル、リアにはハムバッカーが搭載されている。そして、アームがない。アームがあれば、見せかけだけは派手に出来そうなのに、と思って残念だったが、しばらくしたら、いつの間にやらギターにアームがついていた。僕はそれを、ぐりぐりと動かして、ぎゅいんぎゅいんと音を鳴らした。まったく不思議なものだ。ぎゅいんぎゅいん。
 曲が終わると、バンドの連中は、僕のひどい調子はずれな演奏を褒めた。いやあ、いいねえ、さすがだねえ、なんて言っている。悪い気分はしなかった。しかし、僕には何がどうよくてさすがなのか完璧にわからない。連中はもう、ピックはティアドロップに限るねえ、なんてことを言って、スクリーンにスライドを映し、見入っている。