For Unlawful Carnal Knowledge

 地球外生命体としか思えない容貌を持つ蝉がとにかくキライで、だけど別に僕は容姿で中身を判断するタイプ、ってわけではないことは一応強く言っておきたいのだけれど、しかしそれにしてもとにかくキライで。何故って、顔だけじゃなくて、あの騒音。まるで、アアあれね、この人が泣いてアピールするのは人格形成の重要な段階で根本的に欲求が満たされなかったからですね、ははん、といった暴力的と言っていい類の精神分析による一刀両断宣告めいた物言いさえ残念ながらバッチリ当てはまってしまう気がする、あのミンミンいう神経らへんを逆さに撫でてくる泣き声、つまり泣くことによる状況の支配を通じて全的な肯定感を得たいがために泣きまくる困った人ライクにミンミンと泣き叫ぶそのプライマルスクリームぶり、だいたい、土の中に7年?とかそんくらい?かよくわからないというかどうでもいいけどそれぐらいの年齢は重ねているわけで、あいつら外に出てきた時はいい加減いい大人なのだから、もう少し空気なりエアーなりを読んで欲しいよね、と言いたくもなるあの泣き声はブラディかつファッキンおよびdisgustingなやかましさを誇る上に、「なんか動いているモノ」くらいの共通項しか持たないようなものにさえ自動的にジジジと飛びかかる例のアクション、接近した誰彼ステキなサムシングを構わず向かって無差別突撃を仕掛けるような、あなた、その節操のなさは、みなさんに毎日のように執拗に届くあの「逆援助希望女性会員様が貴方様を落札いたしました!」というメールのようじゃないですか、といった感じの、何かもう超古代文明が設置した自動攻撃型の狂戦士兵器だろうかとすら思えるフライングアタックぶりには閉口というか阿鼻叫喚の恐怖だし、それに、さらに聞いたところによると、あいつらは人間様に小水を引っ掛けることもあるのだというのがけしからない。そういうわけで蝉を見ると妙に胸がむかむかしたりして、要するに、それがまあ、夏というものなのだろう。


 そうかと思えば、たとえば夜中の10時頃に客先での会議を終え、さらに仕事せざるを得ないために会社に戻ってる時、その途中で酒飲んで騒いでだらだらといちゃついたり、ホロヨイ気分で帰ろうとしてやがる連中とすれ違ったりすることがよくあるのだけれど、そういうのを見ると、ついつい、「イヤァいいご身分ですね、こちとら今からまたぞろ仕事なのですが、こんなサラリーマンも学生さんもみんなも社長さんもこんなに吐き気がするほど暑いご時世だから手っ取り早くどろどろに溶けてくれないだろうか、そういえばカーカスというメタルバンドは『硫酸どろどろなんでも溶かす』というタイトルの曲を歌っていたが、まさに今その曲が聴きたい気分だよなあ、と思いながら彼らに目を向けると、イエーとか叫びながら『バカンス』という単語の半分の部分を体現したかのような表情で呆けている男女の群れ、ぐだぐだ絡み合うその有様にうっかりハレンチ☆パンチを食らわせてしまっても僕の罪でもないというか、情状酌量の余地はあるだろうな、と感じさせる男女の群れが見えて――まあ実際にはパンチ返しが待っていると思われるので小心者のわたしはこらえるのですが!――やっぱこいつらライトヒア・ライトナウで溶けちゃわないかな、さあ皆さんレッツメルトダウン!」みたいなことをいつの間にか少々声に出してぶつぶつ夜道で呟いたりしてる自分に気付いて、自らの驚くばかりの狭量さにハッとしてグッと来るインサマー。こんなに心が狭くなるのは、それは誰かも言っていたように、きっとそれはあれだ、夏のせい。


 そういうわけで、僕は夏が嫌いです。いや好きなところもあるんですが、根っこの部分でわかりあえないまま二十数年、今に至っている気がします。そんな風に僕と夏との没交渉感は今年も濃厚に漂いつつ、夏休みはもう終わってしまったし、というか、あんまり休んでいないし、おまけに休み中、僕の身体はSHINSEKIの家々というブラックボックスを経た結果、非常に不可解なことに腹の近辺に新たなる肉が増えるという夏にピッタリな怪奇現象が……何か薄れゆく記憶の中に、僕をフォアグラ化させドナドナと市場へ送り出す算段なのではないかという勢いでSHINSEKIなる生物から酒や食物を摂取させられた光景が浮かばないでもないのですが、いや詳しいことはよくわからないのでそれはともかく、ああ…なんていうかもう……夏なんてキライだわ。というわけでまあ今日は、ダイエットしなきゃねーということについて主に書いたつもりです。うまく伝わるといいのですが…。それでは、ちゃおちゃお。